宇宙と体、踊る片鱗

名前のない時
絶え間なく動く体、
愛しきサイレン、
犬の遠吠え

そしてそれはきっと夕暮れ
淡く、そしてとてつもなく潔く抜ける空

研がれる色の鉛筆
明日に繋がる鋭敏な色とりどりのそれらは、
笑いながら私を急かす
美しい鉛たちが、私に溶かされるのを待っている

経過と結果の
緯度と経度が
反転

既存にあったものが変幻していくさま
脱色した布を編む
編みこむごとに反応を起こしていく視覚
透き通る水のような意識
それは連綿に水面に響いてく

「時間」っていう、なんだかおそろしいひとみたいなものは
抗ったり、戦ったり、競うものではなくて
なんにもなくて、そして果てなく、丁寧で、優しい
味方につけたら、とっても、やさしいひと
そしてあなたはいつも、誰のものでもないよと、ゆっくりほほえむ
おそろしいだなんて、ごめんなさいね

三次元が折りたたまれたまま、手帳の中で眠っている七月からのそいつら
けたたましい暑さの記憶は、きっと今年も現れて
それらといかに同化して私の目に映ってくるのだろう

なんだか、すべては新しくて、綺麗につるんとしていて
すぐさま触りたくなるほどとっても潤しい

触ればなくなることを、もう何度も何度も、
この手でおぼえているのに

予期されているものは、丹念に丁寧に練り上げられて、
そして時期が来ると急に熟して、輝いて消える
その瞬間に触れることを恐れると、
それはひとりでに、ゆっくりゆっくり、朽ちていく

無意識のプールで、ペンよ、泳げ。
溶ける、溶ける、その色の洪水たちよ、どうか逃げないで
限界を信じない私の腕は、
紙に濾過を続ける

虻が南天の花びらを散らす
もうすぐあの人が帰ってくる

桜の板で、春菊の根を取る

2014/07/07