あの波の攻略法

自分の意思とは無関係に押し寄せてきた大きな潮流に、
たくさんたくさん抗いながら、
そこで手にしたオールと共に、
今まで経験したことのない、とっても大切な夏が過ぎていきました。
倒れそうな程の数々の愛情を受けて、
言葉に出来ない想い達は、宙を舞って、きらびやかな粒子を放ち、また僕の腕に戻ってきます。
寸分たりとも見逃せないほど、瞬きをしのぐ速さで溢れてくるそれらは名前をつける間もなく、
また宙に戻っていきます。

俺は空を見上げて笑って手を振ります。
「またおいでよ」
だってそれはすぐに消えるものではないもの。
そして決して、俺だけのものではないから。
輝く、「大切」達にひとつひとつ
ビーズをつけて、綺麗に降ろすことができればいいな。
俺が紡ぐ糸で、あなたに届けたいな。

痛みを知ってるあなたは、どう感じるのだろう。

帰る場所がないと焦燥に駆られ、行き急ぐように奔走していたあの時間は、
行く場所が無限大にあると気づかせてくれる、大きな助走期間だと学びました。
そして、どんな場所に行っても、大切な人たちは「おかえり」と言ってくれました。
焦ってばかりだった俺の荷物を、黙って降ろしてくれました。
今、ここにいる、理由。

そして気づくことができなかった、「当たり前」という概念。

カーテンを開ければ、窓があり、窓を開ければ、景色が見える。
自分の足で飛び出せば、その景色の中を歩くことができる。
そして、帰る家があることを、また思い出すことができる。

部屋中を跳ね回るたくさんの光がピンポン玉のように見える。
一瞬一瞬の喜びを投影してダンスを踊っているみたいだ。
何も透かさずに、この自分の目できちんと見えるのは、
きっと、あの苦しみを知ったから。
そして、ひとりではないことを、きちんと、思い出せたから。

攻略法は、ひざを抱えてちゃ見つからない。

脳に病気が見つかり、入院治療の為、しばらくお休みさせていただきました。
お仕事のキャンセルなど、多方面でご迷惑をおかけしまして申し訳ございませんでした。
今はおかげさまで、とっても元気にやってます。

そして、旅を続けています。
また新たな場所で、皆さんにお会いできる日を楽しみにしています。

毎日が「はじめまして」本当に、本当に、ありがとう

2012/10/8